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2018年2月

2018年2月28日 (水)

「受け取りすぎた生活保護費を全額返還するのは当然だ。」は本当か?-その3・過誤払いと生活保護法63条-

前回の記事で,生活保護法63条が本来適用される場面について解説しましたが,このほかにも,生活保護法63条が適用されている場面があります。

それが,生活保護費の過誤払いの場面です。

例えば,生活保護の受給開始後,被保護者が就労して給料を受け取っていたが,

①被保護者が収入申告が必要なことを認識していなかったために収入申告がなされず,月々の保護費から給与相当額が差し引かれずに支給されていた。

あるいは,

②被保護者は収入申告をしていたが,福祉事務所がこれを見落としており,月々の保護費から給与相当額が差し引かれずに支給されていた。

というような場合を考えてみましょう。

Kago

「過誤払い型」の特徴

資力が発生と同時に現実化すること

まず,資力の発生時期と資力が現実化する時期に時間的な隔たりはなく,資力は発生と同時に現実化しています。
したがって,「生活保護法63条本来型」とは異なり,「資力があるが現実化していない」期間は存在しません。

生活保護費の支給決定に過誤があること

次に,資力が発生と同時に現実化しているにもかかわらず,これが収入認定の対象とされず,保護費から差し引かれないまま保護費が支給されるため,保護費の支給決定(上記の図の「保護費支給②~⑩」)には過誤(間違い)があります。

資力が費消済みである可能性が高いこと

そして,資力が発生と同時に現実化しているため,誤支給が判明する時点までに保護費や給与が費消されてしまい,被保護者が返還能力を有していない可能性が高いといえます。

「過誤払い型」の取扱い

原則としての遡及変更

「過誤払い型」の場合,生活保護費の支給決定に過誤(間違い)があるわけですから,本来であれば,間違った支給決定(上記の図の「保護費支給②~⑩」)を遡って変更する(やり直す)べきです。
そうすると,支給決定の遡及変更により,既に支払われた保護費はその根拠を失いますので,被保護者は,民法703条という法律により支給済み保護費の返還義務を負います(なお,この返還義務については,生活保護法80条によって免除することができます。)

ただ,この取扱いには1つ問題があり,行政が一度行った変更をいつまでも不確定な状態にしておくのは妥当ではないという考え方から,支給決定を遡って変更することができるのは3か月程度であると考えられています(『生活保護手帳別冊問答集2017』問13-2)。

そのため,福祉事務所は,上記の図のうち「保護費支給⑨・⑩」については,支給決定の遡及変更をすることで,民法703条によって返還を求めることができますが,それより前の「保護費支給②~⑧」については,返還を求めることができないということになります。

生活保護法63条の適用

しかし,実際には,過誤払い型についても生活保護法63条を適用することで,支給決定を遡って変更することができる3か月にとどまらず,「保護費支給②~⑩」すべてについて返還を求めるのが行政実務の取扱いです。

生活保護法63条が本来予定している場面ではないにもかかわらず,生活保護法63条を適用できる根拠として,以下の2つを挙げることができます。

・『急迫等の場合における』の『等』に,福祉事務所が必要な調査を尽くしていなかったために,資力があるにもかかわらず資力なしと誤認して保護の決定をした場合や,福祉事務所が保護の程度の決定を誤って不当に高額の決定をした場合も含まれると考えられること

・返還額についての裁量が可能であること(『生活保護手帳別冊問答集2017』問13-1)

遡及変更と生活保護法63条の関係

なお,支給決定の遡及変更が可能な3か月について,実際に遡及変更を行って民法703条により返還を求めるか,遡及変更はせずに生活保護法63条により返還を求めるかは,どちらの方法でもよいとされています(『生活保護手帳別冊問答集2017』問13-4)。
この取扱いからすると,「遡及変更の取扱い(民法703条+生活保護法80条による免除)」と,「生活保護法63条」は,同じ内容であるということになります。

「過誤払い型」の返還額はどのように決められるべきか

このように,「過誤払い型」にも生活保護法63条が適用されてますが,この場合,返還額はどのように決められるべきでしょうか。

上記のとおり,「過誤払い型」に生活保護法63条が適用されている根拠の1つは,返還額についての裁量が可能であるからです。
そして,この場面における生活保護法63条の内容は,「遡及変更の取扱い(民法703条+生活保護法80条による免除)」と同じなのですから,裁量権の行使にあたっても,生活保護法80条と同様の配意がなされなければなりません。

「過誤払い型」は,誤支給が判明する時点までに保護費や給与が費消されてしまい,被保護者が返還能力を有していない可能性が高い類型ですから,被保護者の返還能力と過誤払いの経緯等を考慮のうえ,積極的に返還免除を認める必要があります。

「受け取りすぎた生活保護費を全額返還するのは当然だ。」は本当か?-その2・生活保護法63条本来の場面-

前回の記事で,

・生活保護費の返還については,「不正受給の場合」に適用される生活保護法78条と,「それ以外の場合」に適用される生活保護法63条という2つのルールが存在すること

・法文上,「不正受給の場合」に適用される生活保護法78条については全額返還とされているが,「それ以外の場合」に適用される生活保護法63条については全額返還とはされていないこと

を解説しました。

では,生活保護法63条が適用される場合,返還金額はどのように決定すべきでしょうか。
この問題を考えるにあたっては,生活保護法63条がどんな場面に適用されるルールであるのかを整理する必要があります。

生活保護法63条本来の適用場面

生活保護法63条が適用されるのは,

『被保護者が、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず、保護を受けたとき』

です。

厚生労働省の解説では,生活保護法63条とは,

『本来,資力はあるが,これが直ちに最低生活のために活用できない事情にある場合にとりあえず保護を行い,資力が換金されるなど最低生活に充当できるようになった段階で既に支給した保護金品との調整を図ろうとするもの』

であるとされています(『生活保護手帳別冊問答集2017』問13-5)。

例えば,ある世帯が,大規模災害によって急迫状態に陥り,生活保護の受給を開始したが,その後しばらくして,災害による補償金を受け取った,という場合を考えてみましょう。

Honrai

この場合,厚生労働省の解説によれば,生活保護の開始時点から(補償金という)資力があったものとして取り扱われます(『生活保護手帳別冊問答集2017』問13-6)。

したがって,生活保護の受給開始から補償金の受け取りまでに支給された保護費(上記の図の「保護費支給①~④」)は,『被保護者が、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず、保護を受けたとき』に該当しますので,生活保護法63条による返還の対象となります。

「生活保護法63条本来型」の特徴

このような「生活保護法63条本来型」の特徴として,以下の3点を挙げることができます。

現実化していない資力が存在すること

まず,資力の発生時期と,資力が現実化する時期に時間的な隔たりがあり,「資力があるが現実化していない」期間が存在します。

保護費の支給決定に過誤がないこと

次に,「資力があるが現実化していない」期間に保護費が支給されることになりますが,支給される保護費(上記の図の「保護費支給①~④」)の支給決定に過誤(間違い)はありません。
現実化していない資力は保護費から差し引かれるべきものではなく,これを差し引かずに保護費を支給していることは間違いではないからです。

現実化した資力から保護費の返還が可能であること

そして,資力が一括して現実化した後に,その現実化した資力(上記の図の「補償金受領」)から,返還の対象となる保護費を返還することが可能です。

「生活保護法63条本来型」の返還額はどのように決められるべきか。

「生活保護法63条本来型」の場合には,資力が一括して現実化した後に,その現実化した資力(上記の図の「補償金受領」)から,返還の対象となる保護費を返還することが可能です。

したがって,「原則として,資力を上限として支給した保護金品の全額を返還額」としつつ,「保護金品の全額を返還額とすることが当該世帯の自立を著しく阻害すると認められる場合に,一定の費目について自立更生免除を認める」取扱いとしても,当該世帯の最低生活を脅かすような自体は生じにくいといえます。

ただ,そうはいっても,保護費返還決定までに現実化した資力が費消されてしまっているような場合には,当該世帯の最低生活に配慮した上で返還金額を決める必要があるでしょう。

2018年2月15日 (木)

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事務所開設2周年

2018年2月1日で、経堂綜合法律事務所開設2周年となりました。
が、業務繁多によりバタバタと過ごしていたため、気がつけば2週間も経っていました(苦笑)。

皆さまのお力添えにより、無事に2周年を迎えることができました。

今年は、地域にお住まいの皆様に迅速かつ良質なリーガルサービスを提供できるよう、弁護士、事務スタッフの増員を予定しております。
これからも変わらぬお引き立てを賜りますよう,心よりお願い申し上げます。

20万アクセス

ブログ開設時(2011年8月)からのアクセス数が,20万を超えました。

15万アクセスまで約6年かかりましたが、そこから20万アクセスまでは、「生活保護受給世帯の就職活動にパソコンが必要なら,知人等から借りて賄えばいい。」という判決(東京地判平成29年9月21日)にアクセスが集中したため、約半年での到達となりました。

今後も,これまでと変わらず細々と,皆さまのお役に立つ情報を発信していきたいと思います。

2018年2月 9日 (金)

​ 【控訴審報告】「生活保護受給世帯の就職活動にパソコンが必要なら,知人等から借りて賄えばいい。」という判決(東京地判平成29年9月21日)

控訴審での審理

「生活保護受給世帯の就職活動にパソコンが必要なら,知人等から借りて賄えばいい。」という判決(東京地判平成29年9月21日)の控訴審ですが,2018年2月8日に2回目の口頭弁論期日が開かれ,審理が終結されました。

控訴審で新たに判明した事実

この控訴審の審理の中で,新たに明らかになった事実があります。

東村山市で発生した生活保護費の過大支給(7年間で70件,計4704万8652円)との関係

今回の裁判は,東村山市が控訴人(原告)に対し,収入の未申告により生活保護費の過支給が生じたとして保護費約73万円の返還を命じる決定をしたことから,控訴人(原告)が,この決定の取消しを求めて争っているものです。

ところで,以前の記事でも書きましたが,東村山市では,平成18年度から平成24年度にかけて,生活保護費の過大支給(7年間で70件,計4704万8652円)が起き,関係した職員に対する懲戒処分等が行われています(http://www.city.higashimurayama.tokyo.jp/shisei/koho/press-release/kouho2013press.files/20131111choukai.pdf)。

そして,今回,東村山市が控訴人(原告)に対して返還決定をした生活保護費約73万円は,上記の過大支給(7年間で70件,計4704万8652円)のうちの1件であることが分かりました。
(加えて,このことを裏付ける資料には,東村山市側の未処理内容として「収入認定未変更」と記載されていることも判明しました。)

東京都福祉保健局保護課による特別指導検査での指摘事項

また,上記の生活保護費の過大支給の発覚後,平成25年8月27日から同月29日にかけて,東京都福祉保健局保護課による特別指導検査が行われ,その結果として,東村山市に対して以下の指摘がなされています。

・ケースワーカーが標準数の29名に対して10名不足しており,担当世帯数が120世帯を超え,事務負担が重くなっていたことが,事務処理の遅れ,基本的な業務の漏れ,事務懈怠発生の一因と考えられること。

・長期間にわたって収入申告書の徴取がなされていないものが多数存在すること。

・長期間にわたって家庭訪問がなされていないもの,ケース記録の記載のないものが散見されたこと。

担当ケースワーカーの不可解な対応の背景にあったもの

控訴人(原告)に対して保護費の過支給がなされた経緯について解説した以前の記事の中で,控訴人(原告)の担当ケースワーカーの対応に,

・控訴人(原告)に収入申告を促した記録がないこと

・平成24年5月を最後に,平成25年4月までケース記録の記載が一切ないこと

・担当ケースワーカーが家庭訪問をした記録がないこと

・収入認定額について,平成24年5月分として認定された金額が1年以上もそのまま認定され続けていること

といった不可解な点があることを指摘しましたが,今回,その理由や背景事情も明らかになりました。

控訴審判決について

控訴審判決は,2018年4月に言い渡される予定です。

2018年2月 8日 (木)

【補足4】「生活保護受給世帯の就職活動にパソコンが必要なら,知人等から借りて賄えばいい。」という判決(東京地判平成29年9月21日)

考え方の異なる東京地裁の2判決

東京地方裁判所平成29年9月21日判決

前回の記事で,『過支給が生じた経緯が何であろうと,返還能力が無かろうと,そのことは返還金額には関係がなく,全額を返還させるのが原則なのだ。』というのが今回の判決(東京地判平成29年9月21日)の考え方であることをご紹介しました。

実際に,今回の判決は,生活保護法63条と返還能力の関係について,以下のとおり判示しています。

『原告は,本件処分時には,現実の資産としては,現金はほとんど有しておらず, 預貯金を10万円程度有していたにすぎないことから , 本件返還金額の全額を返還する資力を有していなかった旨を主張するが,…生活保護費が過払いとなったにもかかわらず, 被保護者がこれを費消したために生活保護法63条による返還の対象とならないものとすると,本来受給することができなかった金員を受給することを認めることとなり,不合理であることは明らかである。』

東京地方裁判所平成29年2月1日判決

ところが,今回の判決が『不合理であることは明らかである』とする取扱いを,東京地裁の別の判決(東京地判平成29年2月1日)は正面から認めています。

『法63条に該当する被保護者について,その資産や収入の状況,その受けた保護金品の使用の状況,その生活実態,当該地域の実情等の諸事情に照らし,返還金の返還をさせないことが相当であると保護の実施機関が判断する場合には,当該被保護者に返還金の返還をさせないことができるものと解される。』

行政における異なる2つの取扱い

返還決定を取り消す自治体

そして,行政においても,

・過払いとなった生活保護費の返還決定が県の裁決で取り消された例
『過払い返還取り消し 県裁決 大津市福祉事務所に /滋賀』

・過払いとなった生活保護費の返還請求を自主的に取りやめた例
東日新聞『受給者に返還求めず市長の減給や職員の処分も/生活保護費の過支給で豊橋市』

といった取扱いがみられるようになっています。

東村山市での取扱い

生活保護費の過支給とは,なにも不正受給の場合に限って起きるものではなく,様々な場面で様々な理由で起こりえます。

実際に,今回の裁判の被告である東村山市においても,平成18年度から平成24年度にかけて,職員の不適正な事務処理により,70件の過大支給(計4704万8652円)が起き,関係職員に対する懲戒処分等が行われています。
http://www.city.higashimurayama.tokyo.jp/shisei/koho/press-release/kouho2013press.files/20131111choukai.pdf

そして,この過大支給分の取扱いについては,東村山市議会において,福祉事務所長から,

『あくまで過払い、すなわち支払ってはいけないものを支払っている状況でございますので、私どもといたしましては粘り強く返還を求めていきたいと考えております。』

と述べられています。
平成25年東村山市議会6月定例会東村山市議会会議録第10号

さて,この記事を読まれた皆さんは,この中のうち,どの取扱いが『合理的』で,どの取扱いが『不合理』と思われるでしょうか。

【補足3】「生活保護受給世帯の就職活動にパソコンが必要なら,知人等から借りて賄えばいい。」という判決(東京地判平成29年9月21日)

前回の記事のとおり,Aさんに生活保護費が多く支給された理由について,東京地判平成29年9月21日は判決文の中で触れませんでした。

複雑な経緯なので少し長くなりますが,今回の裁判でAさんが主張していることを補足したいと思います。

Aさんに生活保護費が多く支給された理由と経緯

今回の裁判でAさんが主張している,Aさんに生活保護費が多く支給された理由と経緯は以下のとおりです。
______________________________

生活保護の受給と就労の開始

Aさんは,平成23年9月と11月に甲状腺の手術を受け,平成24年2月から生活保護の受給を開始しました。

Aさんは,医師から就労を控えるように指導されていましたが,早く保護から抜けて自立した生活を送ろうと,3月末から派遣社員としてフルタイムでの仕事を始めました。

収入申告書の提出

4月に入ると,Aさんは,担当ケースワーカーのBさんに対し,3月末から働き始めたことと,4月中頃に初回の給与が振り込まれることを書いた収入申告書を提出しました。

そして,5月には,4月中旬に支払われた給与〔3月末に働いた数日分〕の明細と,4月末に支払われた給与〔4月前半分〕の明細を添付した収入申告書をBさんに提出しています(給与は月2回払いでした)。
また,収入申告書を提出した日の夜に,Aさんは,今後も4月末に支払われた給与〔4月前半分〕と同じくらいの金額が月に2回支払われることを電話でBさんに伝えました。

Aさんは,収入申告を毎月しなければいけないという説明を受けておらず,保護を受け始めた際の説明や,保護のしおりの記載などから,仕事を始めたときと退職したときに申告をするのだと理解していました。
そして,Bさんにその後の収入予定(4月末に支払われた給与〔4月前半分〕と同じくらいの金額が月に2回支払われること)も伝えたことから,Aさんは,これで収入申告は済んだと思っていました。

担当ケースワーカーの収入認定

しかし,実際には,Bさんが収入認定の対象にしていたのは,4月中旬に支払われた給与〔3月に働いた数日分〕と4月末に支払われた給与〔4月前半分〕についてでした。
このうち,4月中旬に支払われた給与は,3月に働いた数日分ですから,半月分が支払われるその後の給与の額とはかなりの差があります。
そのため,Bさんが把握していた収入額(=収入認定額)とAさんの実際の給与額に差が生じ,保護費の過支給が生じました。

退職と離職票の提出

その後,Aさんは,派遣期間の満了で10月末に退職するまで仕事を続けましたが,その間,Bさんから連絡が来ることはありませんでした。

11月に入り,Aさんが退職したことをBさんに報告すると,これまでの給与額の内訳が分かる書類を提出するようBさんから求められたため,12月に離職票を提出しました。

パソコンの購入

また,この頃,Aさんが約10年間使用していたPCが故障したため,AさんはPCを買い換えています。

給与明細の提出

その後,Aさんは,Bさんから,働いていたときの給与明細をすべて提出するよう求められたため,平成24年1月に給与明細を印刷してBさんに提出しました。

ところが,給与明細の提出後も,BさんからAさんには特に何の連絡もないまま時間が過ぎていきました。
Aさんは,通院や就職活動を続けていました。

担当ケースワーカーの交代と保護費の返還決定

そして4月に入り,Aさんの担当ケースワーカーが,BさんからCさんに交代になりました。

5月,Aさんは,新しく担当となったCさんから収入申告の遅れを指摘されるとともに,返還金が生じることを告げられました。

この時点で,Aさんは過支給された保護費を費消してしまっており,次の仕事も見つかっておらず,返還することは不可能でした。
しかし,福祉事務所は,Aさんに対し,返還が可能かどうかを尋ねることも,自立更生免除の制度について説明することもせずに,約90万円の返還を命じる処分をしました。

その後,審査請求の中で,返還金額の計算に誤りがあることが判明し,返還金額は約70万円に変更されました。
しかし,Aさんが裁判で訴えた,PCの購入費用その他の支出分の返還免除については,今回の判決は一切これを認めませんでした。
______________________________

担当ケースワーカーBさんの不可解な対応

この経緯の中で,特に担当ケースワーカーであったBさんの対応には,不可解な点が多くあります。

まず,Bさんが作成していたAさんのケース記録には,BさんがAさんに収入申告を促した記録がありません。
それどころか,Aさんのケース記録には,平成24年5月にAさんとBさんが電話で話したことが記録されて以降は,平成25年4月に担当ケースワーカーがBさんからCさんに交代になるまで,何も記載されていません。

もちろん,BさんがAさん宅を家庭訪問した記録もありませんし,BさんがAさんの勤務先や公共職業安定所にAさんの収入状況を照会した記録もありません。
また,収入認定額も,平成24年5月分として認定された金額が,平成25年5月分まで1年以上もそのまま認定され続けています。

しかし,今回の判決では,これらの不可解な点について判決理由の中で触れられることはありませんでした。

過支給が生じた経緯が何であろうと,Aさんに返還能力が無かろうと,そのことは返還金額には関係がなく,全額を返還させるのが原則なのだ,というのが今回の判決の考え方だからです。

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