フォト

プロフィール

お問い合わせ・ご相談

  • お問い合わせ・ご相談のお申し込みにつきましてはこちらのページをご覧ください。

ブログランキング

司法試験

2016年3月30日 (水)

伝聞法則を理解するためのポイント~実践編2~

伝聞法則について,一般に「供述証拠が伝聞証拠にあたるか否かは,要証事実との関係で相対的に定まる。」といわれます。
ところが,この理屈そのものは頭に入っていても,いざ要証事実を認定しようとすると「あれ?要証事実はどれ?」となってしまう受験生も多いのではないのでしょうか。

そこで,今回は,平成21年新司法試験・刑事系第2問を題材に,要証事実の認定を実践してみたいと思います。

まず,公訴事実の確認ですが,検察官は,被告人甲が乙と共謀の上,Vを殺害してその死体を遺棄した旨の公訴事実で,甲を殺人罪及び死体遺棄罪により起訴しています。
これに対して,甲は,第1回公判期日で「自分は,殺人,死体遺棄の犯人ではない。」と述べています。
そうすると,この公判における争点となる主要事実は「(殺人と死体遺棄についての)甲の犯人性」ということになりそうです。

この公判の中で,検察官は,「被告人が本件車両を海中に沈めることができたこと」という立証趣旨で,問題となる実況見分調書の証拠調べを請求しています。
これに対し,弁護人は,その立証趣旨が「被告人が本件車両を海中に沈めて死体遺棄したこと」であると考え,不同意の意見を述べています。

さて,この場面で,問題となる実況見分調書の要証事実をどのように認定すべきでしょうか。

実況見分調書に記載された甲の指示説明や写真部分は,確かに,弁護人の主張するように「被告人が本件車両を海中に沈めて死体遺棄したこと」の立証にも使うことができそうです。

しかし,ここで着目すべきポイントは,
・この公判における争点となる主要事実(=「(殺人と死体遺棄についての)甲の犯人性」)
・証拠調べを請求した検察官の立証趣旨(=「被告人が本件車両を海中に沈めることができたこと」)
・証拠構造(=他に存在する証拠とその内容)
です。

最初に確認したとおり,この公判における争点となる主要事実は「(殺人と死体遺棄についての)甲の犯人性」ですが,この主要事実については,直接証拠である甲の供述調書が存在しています。
そして,直接証拠である甲の供述調書との関係で,検察官の立証趣旨にある「被告人が本件車両を海中に沈めることができたこと」は,甲の自白を裏付ける補助事実として位置づけることができます。
(あるいは,「甲の犯人性」の立証に甲の自白を用いず,他の間接事実から立証していくとしても,「被告人が本件車両を海中に沈めることができたこと」は,「甲の犯人性」との関係で,間接事実の1つとして位置づけることができるでしょう。甲が本件車両を海中に沈めることができないのであれば,甲は犯人ではないわけですから,「被告人が本件車両を海中に沈めることができたこと」という事実は,やはり「甲の犯人性」という争点との関係で意味を持ち得ます。)

つまり,検察官の立証趣旨から導かれる要証事実は,この公判において補助事実(または間接事実)として意味を持っています。
刑事訴訟法は当事者主義を採用していますから,検察官の立証趣旨が無意味なものでない以上,裁判所は検察官の立証趣旨を尊重しなければなりません。
したがって,この問題では,最二決平成17年9月27日の事例とは異なり,(検察官の立証趣旨から離れて)実質的な要証事実を考慮する必要はなく,検察官の立証趣旨である「被告人が本件車両を海中に沈めることができたこと」を要証事実と認定することになります。

2013年4月21日 (日)

伝聞法則を理解するためのポイント~実践編~

「伝聞法則を理解するためのポイント」で書いたことを,平成20年新司法試験・刑事系第2問を題材に実践してみたいと思います。

まず,この事案の公訴事実を確認してみましょう。

検察官は,被告人甲を「被告人甲は,みだりに,営利の目的で,平成20年1月15日,Aマンション201号室の甲方において,覚せい剤50グラムを所持した。」との公訴事実で起訴しています。

つまり,これらが主要事実です。

これに対し,甲は「私のマンションで発見された覚せい剤は私のものではありませんし,これを所持したことはありません。もちろん営利の目的もありません。」と述べ,覚せい罪の所持と営利目的を否認しています。

そうすると,主要事実の中で特に争いがあるのは,
①平成20年1月15日,甲が,甲方において覚せい剤50グラムを所持したこと(及びその故意)
②営利の目的
の2つ,ということになります。
(以下,これらを「主要事実①」,「主要事実②」とします。)

これを受けて,検察官は「Wが平成20年1月14日に甲方で本件覚せい剤を発見して甲と会話した状況,本件覚せい剤を甲が乙から入手した状況及びX組が過去に覚せい剤を密売した際の売却価格」という立証趣旨で,証拠物たる書面として本件ノートの証拠調べを請求しています。

さて,これらを前提に,本件ノート(の中に含まれるW供述,甲供述)の要証事実は何かを考えてみましょう。

1 まず,W供述,甲供述は,主要事実①,②を直接立証する証拠でしょうか。

もちろん,答えは否,です。
そうすると,W供述,甲供述は,主要事実①,②ではなく,これらを推認する間接事実(あるいは,再間接,再々…間接事実)の1つを立証するための証拠,ということになります。

2 では,W供述,甲供述によって立証される間接事実とはなんでしょうか。

(1) まず,主要事実①との関係での間接事実を考えてみましょう。

W供述から考えると分かりづらいので,甲供述から考えてみます。
甲は,「おまえがいた店にも連れていったことのあるY組の乙から覚せい剤50グラムを250万円で譲ってもらった…」と供述しています。
この甲供述から認定できる事実は「甲が,Y組の乙から覚せい剤50グラムを250万円で譲ってもらったこと」(これを,「再間接事実①」とします)であり,それ以上でもそれ以下でもありません。
いつ,どこで乙から譲ってもらったのか,その覚せい剤が今どこにあるのかなどは,甲の供述からは明らかになりません。

ところが,検察官は,「本件覚せい剤を甲が乙から入手した状況」を立証趣旨としています。
つまり,検察官は,甲がY組の乙から譲ってもらった覚せい剤こそが,平成20年1月15日に甲方で発見された「本件覚せい剤」であると考えているのです。

そこで,W供述を見てみましょう。
Wは,『サイドボードの引き出しの中に,見慣れない赤色のポーチを見つけた。…中を見ると,白い粉がビニール袋に入っていた。急に,甲が,「それに触るな。」と言って,私からそのポーチを取り上げた。私は,びっくりして,「何なの,それ?」と聞くと,甲は,「おまえがいた店にも連れていったことのあるY組の乙から覚せい剤50グラムを250万円で譲ってもらった。…」と言った』と供述しています。
このW供述からは,『1月14日の「Y組の乙から覚せい剤50グラムを250万円を譲ってもらった」旨の甲供述が,甲方のサイドボードの引き出しから発見された赤色のポーチの中の白い粉についての説明としてなされたこと』(これを,「再間接事実②」とします)が認定できます。

これらの他に,警察による捜査の結果から,「1月15日,甲方のサイドボードの引き出しの中から赤色ポーチが発見され,同ポーチ内には,ビニール袋入りの覚せい剤50グラムが保管されていたこと」(これを「再間接事実③」とします)が認定できるでしょう。

この再間接事実①~③を合わせることによって,「本件覚せい剤を甲が乙から入手したこと」という間接事実が出来上がり,この間接事実から,主要事実①を相当強く推認できる,ということになります。

そうすると,甲供述の要証事実は,再間接事実①「甲が,Y組の乙から覚せい剤50グラムを250万円で譲ってもらったこと」であり,これは,甲の供述が真実でなければ認定できない(甲の供述の真実性が問題となる)事実ですから,要証事実との関係で甲の供述は伝聞証拠に当たります。

W供述の要証事実は,再間接事実②『1月14日の「Y組の乙から覚せい剤50グラムを250万円を譲ってもらった」旨の甲供述が,甲方のサイドボードの引き出しから発見された赤色のポーチの中の白い粉についての説明としてなされたこと』であり,これも,Wの供述が真実でなければ認定できない(Wの供述の真実性が問題となる)事実ですから,要証事実との関係で甲の供述は伝聞証拠に当たります。

(2) 次に,主要事実②との関係での間接事実を考えてみましょう。

甲は「うちの組では,これまで,0.1グラムを1万5000円で売ってきたんだ。」と供述しています。
この事実の意味づけは,「X組が過去に覚せい剤を有償で取引してきたこと」であり,「甲がX組の幹部であること」と併せて,甲の営利目的を推認させる間接事実になります。
(その他の間接事実としては,50gという覚せい剤の量が挙げられます。)

つまり,甲供述の要証事実は「X組がこれまで覚せい剤0.1グラムを1万5000円で売ってきたこと」であり,これも甲の供述が真実でなければ認定できない(甲の供述の真実性が問題となる)事実ですから,要証事実との関係で甲の供述は伝聞証拠に当たります。

2012年11月15日 (木)

伝聞証拠の定義

刑事訴訟法320条1項は,

『第321条乃至第328条に規定する場合を除いては、公判期日における供述に代えて書面を証拠とし、又は公判期日外における他の者の供述を内容とする供述を証拠とすることはできない。』

と定めています。

つまり,刑訴法320条1項によれば,伝聞証拠とは「公判期日における供述に代わる書面」と「公判期日外における他の者の供述を内容とする供述」です。

ただ,通説によると,伝聞証拠の証拠能力が否定されるのは,反対尋問により原供述者の知覚・記憶・叙述の正確性を吟味することができないことによるものとされています。
そうすると,原供述の内容の真実性を証明するために用いられるのではない場合(=原供述者の知覚・記憶・叙述の正確性を吟味する必要がない場合)には,証拠能力を否定する必要はないことになります。

したがって,刑訴法320条1項により証拠能力が否定される伝聞証拠とは,

「公判期日における供述に代わる書面」と「公判期日外における他の者の供述を内容とする供述」のうち,原供述の内容の真実性を立証するために用いられるもの

ということになります。

伝聞証拠の定義をどう書いて良いか分からないという方は,刑訴法320条1項の文言から出発して考える癖をつけると良いのではないでしょうか。
あとは,320条1項の趣旨から,条文の文言より縮小して(=原供述の内容の真実性を立証するために用いられるものに限定して)解釈するということだと思います。

2012年2月 7日 (火)

伝聞法則を理解するためのポイント

刑事訴訟法の中で,伝聞法則に苦手意識がある受験生は多いと思いますが,思考の枠組みは至ってシンプルで,

①伝聞か非伝聞かを検討し(非伝聞ならそれで終わり),
②伝聞であれば,伝聞例外に該当するかを検討する

だけで終わりです。

ただ,①について「伝聞証拠か否かは要証事実との関係で…」と考え始めると,「あれ?要証事実はどれ?」と思う人が多いのではないかと思います。
ここでいう「要証事実」は,その証拠(伝聞か否かを検討している証拠)によって直接立証される事実のことを指します。

これに対して,公判における最終的な立証命題を「要証事実」と表現することもあって,これが混乱するポイントなのではないかと思います。
両者の関係が整理できると,伝聞法則についての理解はかなり深まるのではないでしょうか。

以下では,公判における最終的な立証命題たる要証事実を「主要事実」と呼んで説明します。

「主要事実」を直接立証する証拠がある場合(そして,この事実とこの証拠の関係で伝聞か非伝聞かを検討している場合),「主要事実」と伝聞法則における「要証事実」とは一致していることになります。

これに対して,「主要事実」を間接事実から推認する場合,伝聞か非伝聞かを考える上で問題となる「要証事実」は,その証拠により立証する間接事実であって,「主要事実」ではありません。
つまり,「主要事実」を間接事実から推認する場合には,その「主要事実」と,伝聞か非伝聞かを検討する上での「要証事実」(=間接事実)が異なる,ということになります。

なお,伝聞証拠か否かを検討する前提として,「主要事実」を間接事実から推認する類型の場合に,「主要事実」との関係で間接事実(=「要証事実」)がどのように機能するかを把握することも重要です。
これが把握できないと「そもそもこの事実を立証して何の意味があるの?ホントにこれ要証事実なの??」となりがちなので,注意が必要です。

もう1つ,①に関連して混乱を招くのが「立証趣旨」という概念ではないかと思います。
「立証趣旨=要証事実」という解説を目にすることもありますが,常にイコールの関係にあるとは限らないのでこれまた注意が必要です。
「要証事実」が何を指すかについては上で整理したとおりですが,これに対し「立証趣旨」とは,(当事者が明示する)「証拠と証明すべき事実との関係」(刑訴規則189条)をいいます。
ですから,当事者が「証拠と証明すべき事実(=主要事実)との関係」として「要証事実」そのものを明示しない限りは,両者は一致しません。
逆にいえば,当事者がそういう明示の仕方をすれば一致することになります。

「立証趣旨」と「要証事実」の関係についてまとめると,多くの場合,前者は後者を把握するためのヒントという位置づけになりますが,たまにそのまま答えになっていることもある,ということになるのではないかと思います。

(伝聞法則を理解するためのポイント~実践編~はこちら。)

2019年1月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31