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生活保護法63条

2018年10月 1日 (月)

生活保護法第63条による返還請求権の一部の非免責債権化

1 生活保護法第77条の2,第78条の2の施行

生活保護法第63条による返還請求権の一部を非免責債権化し,保護費からの天引きを可能にする生活保護法の改正法が今日から施行されています。

第77条の2

急迫の場合等において資力があるにもかかわらず、保護を受けた者があるとき(徴収することが適当でないときとして厚生労働省令で定めるときを除く。)は、保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村の長は、第63条の保護の実施機関の定める額の全部又は一部をその者から徴収することができる。

2 前項の規定による徴収金は、この法律に別段の定めがある場合を除き、国税徴収の例により徴収することができる。

第78条の2

保護の実施機関は、被保護者が、保護金品(金銭給付によつて行うものに限る。)の交付を受ける前に、厚生労働省令で定めるところにより、当該保護金品の一部を、第77条の2第1項又は前条第1項の規定により保護費を支弁した都道府県又は市町村の長が徴収することができる徴収金の納入に充てる旨を申し出た場合において、保護の実施機関が当該被保護者の生活の維持に支障がないと認めたときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該被保護者に対して保護金品を交付する際に当該申出に係る徴収金を徴収することができる。



2 厚生労働省令により非免責債権化から除外される場合

上記1のとおり,生活保護法77条の2には「(徴収することが適当でないときとして厚生労働省令で定めるときを除く。)」という留保が付されており,この「厚生労働省令で定めるとき」については,生活保護法施行規則に以下のとおり定められました。

(厚生労働省令で定める徴収することが適当でないとき)

第22条の3

法第77条の2第1項の徴収することが適当でないときとして厚生労働省令で定めるときは、保護の実施機関の責めに帰すべき事由によつて、保護金品を交付すべきでないにもかかわらず、保護金品の交付が行われたために、被保護者が資力を有することとなつたときとする。



3 「保護の実施機関の責めに帰すべき事由」の具体例

上記2の「保護の実施機関の責めに帰すべき事由」とは具体的にどのような場合を指すのかですが,2018年9月4日に行われた生活保護関係全国係長会議の配付資料では,以下のような場合が具体例として挙げられています。

2 法第77条の2に基づく費用徴収決定について

法第77条の2第1項及び生活保護法施行規則(昭和25年厚生省令第21号)第22条の3に基づき費用徴収の例外となる「保護の実施機関の責めに帰すべき事由によつて、保護金品を交付すべきでないにもかかわらず、保護金品の交付が行われたために、被保護者が資力を有することとなつたとき」とは、具体的には、被保護者から適時に収入申告書等が提出されていたにもかかわらずこれを保護費の算定に適時に反映できなかった場合、保護の実施機関が実施要領等に定められた調査を適切に行わなかったことにより保護の程度の決定を誤った場合等である。

2018年5月15日 (火)

生活保護法63条の非免責債権化により生じるアンバランス

現在,国会で審議されている「生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮者自立支援法等の一部を改正する 法律案」に含まれている生活保護法77条の2という規定により,生活保護法63条による返還請求権は非免責債権(破産しても免責とならない債権)とされることが予定されています。

しかし,生活保護法63条による返還請求権を非免責債権とすると,以下のようなアンバランスが生じることになります。

保護実施機関が支給済み保護費の返還を求める方法

①「戻入の決定」による取扱い

以前の記事 にも書きましたが,生活保護法63条の適用対象には,保護実施機関の算定誤りや,被保護者の故意によらない収入未申告といった類型も含まれています。

これらの類型において保護費の過支給が発見された場合,保護実施機関が支給済み保護費の返還を求める方法の1つとして,発見月から前々月分までの支給済み保護費について「戻入の決定」(=保護費の支給決定を遡って変更し,民法703条により返還を求める)をし,それ以前の支給済み保護費については生活保護法63条による返還を求めることが考えられます。

この場合,発見月から前々月分までの支給済み保護費の返還の根拠規定は民法703条ですから,これが非免責債権となることはありません。

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②生活保護法63条の適用

これらの類型において保護費の過支給が発見された場合に,保護実施機関が支給済み保護費の返還を求めるもう1つの方法は,発見月から前々月分までの支給済み保護費も含め,すべての支給済み保護費について生活保護法63条の規定により返還を求めることです。

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①「戻入の決定」と②生活保護法63条の関係

以上のとおり,発見月から前々月分までの支給済み保護費の返還請求については,①「戻入の決定」,②生活保護法63条の適用,という2つの方法が存在します。
そして,保護実施機関がこの2つの方法のいずれを選択するかについては,どちらの方法でもよいとされています(『生活保護手帳別冊問答集2017』問13-4)。

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生活保護法63条を非免責債権とすることにより生じるアンバランス

発見月から前々月について生じるアンバランス

ところが,生活保護法77条の2により生活保護法63条による返還請求権が非免責債権とされてしまうと,保護実施機関が「戻入の決定」を選択した場合には免責されるにもかかわらず,生活保護法63条による返還を選択すると非免責債権となるというアンバランスが生じます。

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発見月から前々月までと,それ以前の間で生じるアンバランス

また,保護実施機関が「戻入の決定」を選択した場合,発見月から前々月分までの支給済み保護費の返還については免責されるにもかかわらず,前々月より前の支給済み保護費の返還については非免責債権となるというアンバランスも生じます。

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これらのアンバランスは,生活保護法63条による返還請求権という,本来非免責債権とされるべきではないものが今回の改正法により非免責債権とされていることをよく現していると思います。

2018年5月 9日 (水)

『「生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律案」から生活保護法第77条の2、同法第78条の2の削除を求める意見書』(東京弁護士会)

東京弁護士会のホームページに,『「生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律案」から生活保護法第77条の2、同法第78条の2の削除を求める意見書』が掲載されています。

2018年5月 7日 (月)

「いわゆる生活保護法63条返還債権について非免責債権化し保護費からの天引き徴収を可能とする生活保護法改正案に反対する意見書」(日本弁護士連合会)

日本弁護士連合会のホームページに,「いわゆる生活保護法63条返還債権について非免責債権化し保護費からの天引き徴収を可能とする生活保護法改正案に反対する意見書」が掲載されています。

2018年2月28日 (水)

「受け取りすぎた生活保護費を全額返還するのは当然だ。」は本当か?-その3・過誤払いと生活保護法63条-

前回の記事で,生活保護法63条が本来適用される場面について解説しましたが,このほかにも,生活保護法63条が適用されている場面があります。

それが,生活保護費の過誤払いの場面です。

例えば,生活保護の受給開始後,被保護者が就労して給料を受け取っていたが,

①被保護者が収入申告が必要なことを認識していなかったために収入申告がなされず,月々の保護費から給与相当額が差し引かれずに支給されていた。

あるいは,

②被保護者は収入申告をしていたが,福祉事務所がこれを見落としており,月々の保護費から給与相当額が差し引かれずに支給されていた。

というような場合を考えてみましょう。

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「過誤払い型」の特徴

資力が発生と同時に現実化すること

まず,資力の発生時期と資力が現実化する時期に時間的な隔たりはなく,資力は発生と同時に現実化しています。
したがって,「生活保護法63条本来型」とは異なり,「資力があるが現実化していない」期間は存在しません。

生活保護費の支給決定に過誤があること

次に,資力が発生と同時に現実化しているにもかかわらず,これが収入認定の対象とされず,保護費から差し引かれないまま保護費が支給されるため,保護費の支給決定(上記の図の「保護費支給②~⑩」)には過誤(間違い)があります。

資力が費消済みである可能性が高いこと

そして,資力が発生と同時に現実化しているため,誤支給が判明する時点までに保護費や給与が費消されてしまい,被保護者が返還能力を有していない可能性が高いといえます。

「過誤払い型」の取扱い

原則としての遡及変更

「過誤払い型」の場合,生活保護費の支給決定に過誤(間違い)があるわけですから,本来であれば,間違った支給決定(上記の図の「保護費支給②~⑩」)を遡って変更する(やり直す)べきです。
そうすると,支給決定の遡及変更により,既に支払われた保護費はその根拠を失いますので,被保護者は,民法703条という法律により支給済み保護費の返還義務を負います(なお,この返還義務については,生活保護法80条によって免除することができます。)

ただ,この取扱いには1つ問題があり,行政が一度行った変更をいつまでも不確定な状態にしておくのは妥当ではないという考え方から,支給決定を遡って変更することができるのは3か月程度であると考えられています(『生活保護手帳別冊問答集2017』問13-2)。

そのため,福祉事務所は,上記の図のうち「保護費支給⑨・⑩」については,支給決定の遡及変更をすることで,民法703条によって返還を求めることができますが,それより前の「保護費支給②~⑧」については,返還を求めることができないということになります。

生活保護法63条の適用

しかし,実際には,過誤払い型についても生活保護法63条を適用することで,支給決定を遡って変更することができる3か月にとどまらず,「保護費支給②~⑩」すべてについて返還を求めるのが行政実務の取扱いです。

生活保護法63条が本来予定している場面ではないにもかかわらず,生活保護法63条を適用できる根拠として,以下の2つを挙げることができます。

・『急迫等の場合における』の『等』に,福祉事務所が必要な調査を尽くしていなかったために,資力があるにもかかわらず資力なしと誤認して保護の決定をした場合や,福祉事務所が保護の程度の決定を誤って不当に高額の決定をした場合も含まれると考えられること

・返還額についての裁量が可能であること(『生活保護手帳別冊問答集2017』問13-1)

遡及変更と生活保護法63条の関係

なお,支給決定の遡及変更が可能な3か月について,実際に遡及変更を行って民法703条により返還を求めるか,遡及変更はせずに生活保護法63条により返還を求めるかは,どちらの方法でもよいとされています(『生活保護手帳別冊問答集2017』問13-4)。
この取扱いからすると,「遡及変更の取扱い(民法703条+生活保護法80条による免除)」と,「生活保護法63条」は,同じ内容であるということになります。

「過誤払い型」の返還額はどのように決められるべきか

このように,「過誤払い型」にも生活保護法63条が適用されてますが,この場合,返還額はどのように決められるべきでしょうか。

上記のとおり,「過誤払い型」に生活保護法63条が適用されている根拠の1つは,返還額についての裁量が可能であるからです。
そして,この場面における生活保護法63条の内容は,「遡及変更の取扱い(民法703条+生活保護法80条による免除)」と同じなのですから,裁量権の行使にあたっても,生活保護法80条と同様の配意がなされなければなりません。

「過誤払い型」は,誤支給が判明する時点までに保護費や給与が費消されてしまい,被保護者が返還能力を有していない可能性が高い類型ですから,被保護者の返還能力と過誤払いの経緯等を考慮のうえ,積極的に返還免除を認める必要があります。

「受け取りすぎた生活保護費を全額返還するのは当然だ。」は本当か?-その2・生活保護法63条本来の場面-

前回の記事で,

・生活保護費の返還については,「不正受給の場合」に適用される生活保護法78条と,「それ以外の場合」に適用される生活保護法63条という2つのルールが存在すること

・法文上,「不正受給の場合」に適用される生活保護法78条については全額返還とされているが,「それ以外の場合」に適用される生活保護法63条については全額返還とはされていないこと

を解説しました。

では,生活保護法63条が適用される場合,返還金額はどのように決定すべきでしょうか。
この問題を考えるにあたっては,生活保護法63条がどんな場面に適用されるルールであるのかを整理する必要があります。

生活保護法63条本来の適用場面

生活保護法63条が適用されるのは,

『被保護者が、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず、保護を受けたとき』

です。

厚生労働省の解説では,生活保護法63条とは,

『本来,資力はあるが,これが直ちに最低生活のために活用できない事情にある場合にとりあえず保護を行い,資力が換金されるなど最低生活に充当できるようになった段階で既に支給した保護金品との調整を図ろうとするもの』

であるとされています(『生活保護手帳別冊問答集2017』問13-5)。

例えば,ある世帯が,大規模災害によって急迫状態に陥り,生活保護の受給を開始したが,その後しばらくして,災害による補償金を受け取った,という場合を考えてみましょう。

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この場合,厚生労働省の解説によれば,生活保護の開始時点から(補償金という)資力があったものとして取り扱われます(『生活保護手帳別冊問答集2017』問13-6)。

したがって,生活保護の受給開始から補償金の受け取りまでに支給された保護費(上記の図の「保護費支給①~④」)は,『被保護者が、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず、保護を受けたとき』に該当しますので,生活保護法63条による返還の対象となります。

「生活保護法63条本来型」の特徴

このような「生活保護法63条本来型」の特徴として,以下の3点を挙げることができます。

現実化していない資力が存在すること

まず,資力の発生時期と,資力が現実化する時期に時間的な隔たりがあり,「資力があるが現実化していない」期間が存在します。

保護費の支給決定に過誤がないこと

次に,「資力があるが現実化していない」期間に保護費が支給されることになりますが,支給される保護費(上記の図の「保護費支給①~④」)の支給決定に過誤(間違い)はありません。
現実化していない資力は保護費から差し引かれるべきものではなく,これを差し引かずに保護費を支給していることは間違いではないからです。

現実化した資力から保護費の返還が可能であること

そして,資力が一括して現実化した後に,その現実化した資力(上記の図の「補償金受領」)から,返還の対象となる保護費を返還することが可能です。

「生活保護法63条本来型」の返還額はどのように決められるべきか。

「生活保護法63条本来型」の場合には,資力が一括して現実化した後に,その現実化した資力(上記の図の「補償金受領」)から,返還の対象となる保護費を返還することが可能です。

したがって,「原則として,資力を上限として支給した保護金品の全額を返還額」としつつ,「保護金品の全額を返還額とすることが当該世帯の自立を著しく阻害すると認められる場合に,一定の費目について自立更生免除を認める」取扱いとしても,当該世帯の最低生活を脅かすような自体は生じにくいといえます。

ただ,そうはいっても,保護費返還決定までに現実化した資力が費消されてしまっているような場合には,当該世帯の最低生活に配慮した上で返還金額を決める必要があるでしょう。

2017年12月 9日 (土)

「受け取りすぎた生活保護費を全額返還するのは当然だ。」は本当か?-その1・生活保護法63条と78条の違い-

「生活保護受給世帯の就職活動にパソコンが必要なら,知人等から借りて賄えばいい。」という判決(東京地判平成29年9月21日)について、

というご意見も少なからず頂戴しました。

さて,このツイートのように「受け取りすぎた生活保護費を全額返還させるのは当然だ。」と本当に言えるのでしょうか。

生活保護費の返還に関する2つのルール

この問題を考えるためには,生活保護法の仕組みについていくつか理解しなければならないことがあります。
そのうちの1つが,受け取りすぎた生活保護費の返還に関する2つのルール(生活保護法63条と78条)の違いです。

生活保護法78条

『不実の申請その他不正な手段により保護を受け、又は他人をして受けさせた者があるときは、保護費を支弁した都道府県又は市町村の長は、その費用の額の全部又は一部を、その者から徴収するほか、その徴収する額に百分の四十を乗じて得た額以下の金額を徴収することができる。』

この規定は,いわゆる「不正受給」(不実の申請その他不正な手段により保護を受けたとき)の生活保護費返還のルールを定めています。

この規定の「その費用の額の全部又は一部を,その者から徴収する」というのは,
・受け取った生活保護費の全部が不正受給の場合は,その全額を,
・受け取った生活保護費の一部が不正受給の場合には,その一部について全額を
返還させるという意味だとされていますので,まさに「全額返還」です。

生活保護法63条

『被保護者が、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず、保護を受けたときは、保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して、すみやかに、その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない。』

この規定は,「不正受給」以外の場合(被保護者が,急迫の場合等において資力があるにもかかわらず,保護を受けたとき)の生活保護費返還のルールを定めています。

この規定では,返還金額は「受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額」とされており,法文上は「全額返還」とはされていません。

生活保護費の返還を求められたら

このように,受け取りすぎた生活保護費の返還については,生活保護法78条と63条という2つの異なるルールが定められていますので,生活保護費の返還を求められている方は,ご自身が生活保護法78条と63条のどちらによって返還を求められているのかをまずは確認する必要があります。